2024年3月14日木曜日

安行中 my love 2024春

決して安行中だけのことを書きたいのではないのです。

塾に来てくれた生徒が通う東中のことも神根中のことも、それから塾生ではなかったけれど鳩中も戸塚地区の2中学のことも含めてその総称として、安行中という言葉を使わせていただきます。

 

 

今年の高校受験が終わって、今年1年に起きたことを振り返っている。

例年とは違うのかもしれないと思ったのは、9月の北辰テストが帰ってきたときだった。生徒の偏差値が僕が予想していたよりも、3から5低い数字だった。

 

仕事がら、僕はわりと塾生の北辰偏差値を当てるのを得意としている。これまでも生徒たちの北辰偏差値をずいぶん当ててきたように思う。

基準としていたのは塾で自習する生徒たちの学習時間とその様子で、そこに僕が担当する数学の式の立て方などから判断することができていたように思う。

 

2月に受験を迎えた生徒たちの半分くらいが、部活が終わる6月頃から猛烈に勉強を始めた。平日の放課後から夜塾が閉まるまで、土曜日曜も午前中から夜まで僕が感心するくらいのペースで勉強していた。

だから9月の北辰テストの結果を楽しみにしていた。ところが結果が塾に届いて、封を開けてみると、65くらいと思った生徒の偏差値が60近辺だったし、60くらいと思った生徒の偏差値は50台半ばだった。

 

何が原因なのかと考えて、アクティブラーニングと英語のファイブラウンドシステムズのことを思った。

近くの中学では昨年から、他の中学では今年からこの新しい授業のスタイルに変わっている。

 

中学の先生方の中には、この新しい授業の形が学力を上げる唯一の方法だとの見解を持っている人がいるようである。でも中学授業がこのスタイルになってから子供たちに変化が明らかに出始めている。

授業が分からない…の感覚がごく普通のこととして捉えるようになってきた。

以前であれば、授業が分からない…と感じた生徒たちは、保護者に相談するとか、塾に通おうとするとかの対処を考えたと思う。

でもこのスタイルになってからは、そうした対応を考える子供たちの割合が大きく減少したような気がする。

授業が分からないことをわりと平気なこととして、子供たちは勉強の悩みを持ち始めたように思う。

 

もちろん生徒の中にはそうした生徒たちと一線を画す生徒もいるわけで、そうした生徒たちの偏差値が上がらなくなってきたことを僕は実感していたのだった。中学の授業のレベルが僕の想像以上に下がってきているのかもしれない。そうした印象を強く持った一年でもあった。

 

塾として何らかの対応が必要となってきていた。

平日の授業の中に5教科の質問ができる時間も設けたし、土曜日曜にもやはり5科の質問ができる時間を作った。そして僕は毎週のように数学の補習を土曜日曜に行っていた。

でも偏差値の問題は、もう受験の時期まで生徒たちを苦しめることになってしまった。多くの生徒が合格平均偏差値に届かない中で高校受験を迎え、そして合格した生徒もいたし、残念ながら不合格となってしまった生徒もいる。

 

ここ数年北辰テストの偏差値の通りの受験結果が出なくなっている。中学の校長会テストも同様で、受験生にとってもっと別の指針が必要になってきているとの思いがある。

塾生には合格に必要な得点を伝えていて、入試過去問演習の得点によって受験校を決めてもらった。不合格の可能性が高い生徒には、直接ご自宅に連絡を入れさせていただいた。

ただ一つ、僕が読み違えたことがある。数学の難易度だ。

 

決して難しい数学の問題を想像していなかったわけではないが、ここまでの問題は想像していなかった。

いや、というよりも、この地域の中学生たちの数学の学力の下降があって、その下降と問題の難易度の上昇が非常にいい塩梅でこの地区の受験生たちにとって解きにくい問題になってしまった。そんな印象すらある。

たとえば一昨年の選択問題と今年の選択問題の難易度はほぼ同程度か若干今年の方が難しいレベルではないかと思う。

でも同時にこの2年の間にこの地区の生徒たちには数学の学力の低下があった。そこまで考えるべきだったのかもしれない。それが後悔として残る受験だった。

 

数学の学力の低下…。それを初めて感じたのは、塾生たちから提出された定期試験の得点表を見たときだった。

学年順位が一桁の生徒の数学の得点が70点台であることが驚きだった。

数年前までは学年順位一桁の生徒の5科の得点はたいていすべて80点台後半以上だったと記憶している。きっと5教科の合計点はここ数年で数十点下がり、中でも数学の得点は大きく低下した。

 

今年の高校受験の内容を顧みると、数学以外の4教科はそれほど難しい問題ではなかったと思われる。比較的解きやすい問題だったとの感想が多かった。

 

学力問題では、例年よりもやや難しいと思われる数学であっても、塾生たちはおそらく平均点付近以上の得点を取っていたようである。だから学力問題の方は他の地域との間にそれほど大きなハンディはなかったと思われる。

塾生の場合、ほとんどの生徒が121月の北辰テストで、前年度までの合格者平均偏差値よりも1〜2程度低い状態で受験校を決めていたのに関わらず合格することができた。

冬期講習会以降に行っていた過去問題の演習が成果を出したように思っている。

 

問題なのは選択問題の方で、たいていの生徒たちは数学以外の4教科で期待していた得点を取れたようであるが、数学で得点を下げた生徒が出ていた。

そうした中でも数学の得点の分を他の4教科で補った生徒は合格し、それが間に合わなかった生徒が不合格となる結果となったようである。

この辺が他の地域の受験生たちとの間でハンディになってしまったのではなかったか? そうした印象を持っている。

 

塾生たちに数学を教えている者として、この地域の中学生たちの数学のレベルを選択問題に対応できるレベルまで上げることの難しさをひどく感じている。

塾生の場合、中2から発展レベルのテキストを使い、ほぼ毎土曜日曜に数学の補習をしているというのに、どうしても選択問題のレベルの学力を身につけてもらうことのできなかった生徒が出てしまった。

いったい他にどんな方法があるというのだろうか? それが正直な気持ちとして心に残った。

 

いま求められているのは知識の量ではなく、数学という科目の考え方の方だから、ただテキストを進めるだけでは入試での得点となる力を身につけてもらえることが出来ないという事情がある。

その上、今回の入試の数学で得点を下げた生徒であっても、他県の問題では高得点を取ったりしている。その辺のことが、より高校入試を難しくしているのかもしれない。

 

県入試の数学で必要とされているのは知識の量ではないというのに、学校授業は知識を身につけることに終始せざるをえない状況があって、他県ではまだそれが通用する部分があるのに、県入試は時代が求める新しい問題の方向に大急ぎで舵を取っている。

唯一の解決策があるとすれば、小学生時代から知識を得るだけでない考える算数を学ぶことだと思うのだけれど、当然学校で身につけられる訳もなく、塾に通ったとしても、そこが計算中心の指導の塾であったり、基礎的な内容の指導を専門とする塾であったとしたら元も子もない訳で、でも保護者の関心は内容よりも我が子が机に向かう姿を求める風潮のようなものがあって、そのことが子供たちにハンディを持たせるだけでなく、高校受験自体のハンディを広げることに繋がってきているような気がする。

 

それを思った時、新学期が始まって来年の受験生の前に立つ僕はかなり必死になっているには違いないのだけれど、これからの生徒たちを浦和西や蕨にはもう送ることが出来ないのではないか?との不安を感じ出している。

2022年4月20日水曜日

安行中 my Love 「2022年のいま」

塾に来てくれている生徒たちを通して、僕はいつも彼らが通う近くの中学校を見ている。

手にはいつだって潜望鏡を持ち、生徒たちや保護者の方たちから聞こえてくる話から、いま近くの中学校で何が起きているのかを僕はいつも思っている。

なぜって、高校受験にとっては中学校の動向は無視できない。中学校の動きを僕たちが絶えず理解していないと、高校入試の結果は喜びとは違う方向に向かう…。

 

本当は中学校と塾がタッグを組んで、高校入試に向かった方が良い結果が出るに決まっている。

でも塾は中学校にとってはきっと信用できない存在だから、もう塾をやって三十年近く経つというのに、僕には中学校とタッグを組ませてもらったという経験はない。

いつも中学校の動向に目をやりながら、中学校の動向がこうだから、塾はこうしなければならない…と考えてきたような気がする。

 

その近くの中学校の状況が、最近また気になり出している。

今回 安行中my Love…というタイトルをつけさせてもらったけれど、何も安行中だけに限ったことではないと思う。

安行東中もそうだし、東中だって状況は同じだと思う。

戸塚地区の2中学と鳩中は、やや安行中たちよりはやや良い状況にはあると思う。でもだからと言って、これから書かせていただくことは無縁ではない。かなり当てはまる部分があるはずである。

もう一つの近くの中学である神根中はどうかと言えば、だいぶ状況は上記の中学校とは違うようである。一言で言えば落ち着いているということができると思う。とはいえ、やはりかなりの部分で当てはまると、僕はそう思っている。

 

 

「中学校授業はいま?」

 

日々中学校で繰り返される授業、この内容が県入試に対応できなくなっている。対応できないというよりも、定期テストの成績上位者や、通知表で「5」の評定を取る者が、実際に入試を受けたときに得点が取れなくなってきている。

以前からこの傾向はあったが、それがここ1年から2年でさらに大きく進んできたような気がする。

 

例えば定期テストの学年順位で一桁の順位の生徒と二十番台の生徒が北辰テストなり、入試問題を解いたとしたときに、二十番台の生徒の方が高得点を取るというケースが出てきた。

学校授業とは違う頭の使い方を覚えないと、いまの北辰テストや入試問題は解けない。それなのに、それを中学校はそれに対応しようとはしていない。というも、高校受験に対応できる授業を行える状況ではなくなってきているのではないか。

 

 

「中学校は、なぜ県入試に対応できない授業をしているのか?」

 

一つには、学級崩壊がある。クラスで何人かの生徒たちが勝手な行動を取る。それに呼応して、教室内がざわつきだす。それが授業中にほとんどのクラスで起きている。

もちろん先生方はそれを必死に食い止めようとするわけで、先生方の努力で学級崩壊がどのクラスでも起きているわけではないようだが、どのクラスにも学級崩壊ギリギリの線で授業が行われている現状があるのではないか。

その上一部の生徒たちの問題行動は、学校の中だけではとどまらない。

そうした中で先生方が第一に行わなければならないことが、授業でなくなっているという現実がある。

 

もしかしたら授業のレベルを上げるということが、先生方の願いではなくなっているのかもしれない。

それどころじゃないんだ…。そんな声が先生方から届いてきそうな気がしている。

 

 

「生徒たちはいま?」

 

多くの生徒たちにとって、中学校の授業のレベルがこの国の中で決して低いレベルにあるという認識はきっとないのだと思う。

生徒たちも、それからほとんど保護者の皆さんだって、中学校でごく平均的なレベルの授業を受けているという認識を持っているのだと思う。

だからちょうど中間の生徒が入る公立高校は、ごく平均的な学力の高校だと思っているだろうし、中学での学力順位40位(安行中約250人中)付近までの生徒たちが入学する市内の県立高校は進学校だと言われている。

でも実際にはどうなのか? 両校ともさいたま市の中学生たちには、敬遠される高校のように思われる。

 

その上日々の部活がある。コロナ禍の中ですべての部活動は制限を受けている状況にあるが、制限の期間が終わると、一気に子供たちは部活動の時間の制約を日常的に受けることになる。

そうした中、部活動を真面目に取り組むこと、その部活で活躍することの方が勉強することよりも興味が上回るような環境が中学にあるのかもしれない。

 

そして誰もが自分たちは真面目に勉強している方だ思っているだろうし、僕たち、私たちよりももっと成績が悪い生徒はいる…という感覚がほとんどの生徒たちの心の中にはあるように思う。

だから平均付近の生徒たちの学力の落ち込みが最近は激しい。

 

 

「保護者たちはいま?」

 

おとなたちの中には、先生と呼ばれる人たちに対して嫌悪感を抱く人たちがいるのかもしれない。

 

なぜ? どうして? そういった感覚を持つのかは、僕には分からない。

人それぞれ考え方には特徴があるはずだから、何らかの理由で、おとなになる過程で、そうした思いを持つことになったとしたところで、人がとやかく言うべきではないと思っている。

 

ここ何年か、塾に来てくれている生徒たちの保護者の方と話をしているときに、もしかしたらこの地域の保護者の中には、先生と呼ばれる人たちに対して、毛嫌いに近い感情を持つ方たちが多いのかもしれないと思うことが何度かあった。

先生と呼ばれる人に対する毛嫌いというよりも、指示を出されることに対する反発といった方が良いのかもしれない。

 

やっぱり学校の先生方に対して、あるいは学校というものに対して、不信感に近い感情を持ち合わせているおとなたちはきっといるのだと思う。

この地域は、そうした考えを持つ方たちの割合が他の地域よりも高いのではないだろうか? だから余計に中学校の先生方と保護者の本当の意味での協力関係が築きづらくなっているし、そのことが周り回って、結局は子供たちを苦しめているような気がする。

 

 

「学習塾はいま?」

 

周りの学習塾を見ていて、僕には分からないことが一つある。

なぜ入試の直前になっても、入試問題の演習をしないのか?ということである。

 

シローズは冬期講習会以降の中3クラスは、全授業が前年の入試問題の演習と解説になる。

入試直前の時期の入試問題の演習は、かなり入試本番の得点を上げる力を持つ。それに気づいているから、僕たちは毎年入試問題に向かい合う。生徒に解説をするために必死に入試問題を解いているし、講師になってもらう条件には入試問題の解説ができる人であることが大前提になっている。

 

それなのに入試問題の指導をしている塾は意外に少ない。2月の中旬になって、やっと入試問題の演習をする塾はまだいい方で、まったく入試問題の演習を行わない塾まであるらしい。

 

入試問題の演習を行うと、不合格者は確実に減る。これは紛れもない事実で、毎年合格発表の日に入試問題の演習に助けられたとの実感が僕にはある。

それを他塾がなぜ行わないのか? 僕には、それが分からない。

 

 

「高等学校はいま?」

 

最近思うのは、私立高校がどんどん予備校的になっているような気がしている。それも生徒全員を対象としたものでもなくて、学力の低い高校(偏差値50台)では一部の生徒、ある程度のレベルの高校(偏差値60台半ば以上)では67割程度の生徒しか、その成果が出ていないようだ。

 

だから私立高校の方が大学受験に有利だということは決してないと思う。よほど高いレベルの私立高校でもない限り、大学受験に有利なのは、その私立高校に通う一部の生徒に限られたことになっているような気がする。

この地域の中学生たちのほとんどが入学する私立高校は、大学受験に特段有利な高校とは言えないのではないか?

 

それと高校の3年間を大学受験一色の生活にしてしまって良いのか?との思いもある。

私立高校への進学が、部活をやり、友達を作り…という一般的なおとなたちが考える高校生活とは違うまるで予備校的な生活を送らせることになってしまう場合だってあるのではないか?

 

もう一つの公立高校の方はというと、いまかなり二極化が進んでいるような気がする。

一方では生徒を励まして、通う高校が素晴らしい高校だと伝え、生徒たちに誇りを持たせようとする。もう一方では世の中で起きていることを伝え、その中で君たちはどうやって生きていくか?と問いかけ続ける。

 

前者は川口工業から市立川口高校までが当てはまり、後者は浦和西から一女、浦和高校までが当てはまる。

僕が不安なのは、前者の高校にこの地域の中学生のほとんどが入ること。彼らは現実を見せられない高校生活を送ることになるのかもしれない。そのことが、僕には気になっている。

 

 

「高校入試はいま?」

 

成績を上げ そこまで書いて、僕はキーボードの上の指を止めた。

そもそもいま、この地域の中学生たちの成績には種類がある。何種類かと言えば、3種類の成績がすぐ頭に浮かんだ。

 

一つは定期テストでの成績、二つ目が通知表の成績、そして三つ目が入試の合否を決める成績である。

この3つの成績は、本来は同じ成績であるはずなのに、なぜだかここにきて、この地域ではその3つの成績が別物になってきているような気がする。

 

例えば定期テストでたいてい一桁の順位の生徒の5教科の通知表に「4」の評定があったり、あるいは通知表で「5」の評定の科目の北辰偏差値が40台後半だったりということが起きている。

ちなみに今年の受験で、ある県立高校に4人の生徒が受験したが、不合格になった1人は内申が4人の中では一番高い生徒だった。

そうしたことが、ここにきて急に起きるようになった。

 

話を元に戻したい。

成績を上げ、生徒とその保護者の方が目指す高校に合格させることが、塾の仕事である。

ただ、やっぱりそのことが難しくなってきている。

 

さいたま市の小学生とこの地域の小学生の間には、読解力と発想力を筆頭に大きな学力の差が生じている。だから中学入学後にまずこの格差を減らす必要がある。

でも、やっぱりこれがなかなかうまくは進まない。

とくに中間層の成績が一向に上がってこない。いや、上がるのだけれど、すぐに下がってしまっているような気がする。

これにはきっと訳があって、学習量の持続ができなくなってきているのではないか?

彼らには、成績が下の生徒が大勢いる。それが中間層の生徒たちから、学習に対する必死さを奪っているような気がする。

 

そんな子たちが受験の時期になった時、これまで学習量の持続ができなかった彼らであっても、志望校に合格するために勉強を始める。それほど勉強量を上げられない子であっても、志望校に合格したいと切に願いだす。

僕たちは、入試問題の演習という突貫工事を彼らにしてもらう訳なのだけれど、これは彼らの入試時の得点を大いに上げる。でも突貫工事で生み出された学力は、高校入学後にどこまで役立つのか? そこに不安を感じている自分がいる。

 

結局もしも上位の高校を目指すのであれば、中1時に読解力と発想力を身につけさせる必要がある。でもまださいたま市や戸田市や東武東上線沿線といった学習レベルの高い地域には近づかない。

だから中2時の学習量が入学時と入学後の成績に大きく影響しているような気がしている。中学校の授業のレベルでない難問に近い問題を多く解かなくてはならないのも、この時期だと思う。

 

1時の問題演習量があって、それによって発想力や思考力が身について、それを使った難問の問題演習を中2時に行う。その経験は入試時はもちろん入学後にもおおいに役立つはずだ。

 

1、中2時に中学校授業のレベルの学習しかした経験がなくて、中3時の受験期になって入試問題を解いた場合は、年々県入試に対応できなくなってきているような気がする。とくに選択問題の実施校への受験はあ合格という危険を伴うのではないか。

その辺が例えば5年前の高校入試と今年からの高校入試の違いで、あの頃であれば、そうしたやり方でもまだ間に合っていたような気がする。だから僕の中では学校の定期テストの存在がどんどん小さくなっていっている。

 

こうした状況にどれだけの人が気づいているのだろうか?

多くの方たちは、いまでも英検や数検を取ることが高校受験のプラスになると信じているという現状がある。

ところが英検や数検の問題と入試問題は内容が違ってきている。だから英検や数検がわずかな内申点のプラスには役立つだろうが、その勉強が入試問題に役立つことはないと思う。

 

 

「高校入試、これから?」

 

ここ10年ほど、僕は毎年毎年、県入試の問題の変化に追われているような気がしている。

その年の県入試の問題を解いて、それに対応するために僕たちは授業の内容を毎年少しずつ変えなくてはならなくなっている。

そして今年また大きく県入試の問題が変わった。中学の指導要綱が変わったことによる変化だと思う。これまでよりも深く、思考力が求められる問題になった。

 

問題に思うのは中学校から伝わってくる高校受験の情報からも、それから高校受験を経験した保護者の知り合いからの情報からも、なかなか受験の現状が伝わりにくくなってきている。

この地域の一番の問題は、もしかしたら学力の問題以上に情報の問題なのかもしれない。

受験期までにどこまで正確な受験情報を得られるのか? それによって合否が決まっていく。でもその怖さを知っている人たちは実は少ないのかもしれない。

 

この地域の場合、前述のように中学入学時の時点で、大きな学力の遅れがある。それを改善しながら、中学学習内容を身につけていく。

それは並大抵なことではない。市立川口以上の選択問題実施校への合格者が15名から20名程度(安行中)の現状はそうした事情によるものなのだろう。

 

生まれつき学習に向いている生徒は別として、一般的な生徒にとっては選択問題実施校への合格は年々遠のいて行くという状況がある。

それを解決するためには、かなりの量の学習量が必要となる。

それをこなせる生徒には、選択問題実施校への合格は身近なものとなる。でもかなりの量の学習量を維持できない子にとっては、年々選択問題実施校への合格は難しくなっている。

 

この状況を変えるには、何をすべきなのか?

塾を始めてから、僕の思いはそこに行き着くことになるのだけれど、いつもいつも解決策が見つからずに、僕は生徒と保護者の方の落胆の中で塾を続けている。

2020年11月25日水曜日

こんなやり方を取りたいわけじゃないけれど、取らざるを得ない「浦和西、蕨の合格の仕方」

落ち着いて、頭の中で湧き上がるさまざまな不安を取り除いて考えたとき、この地域、この地域というのは戸塚、鳩ヶ谷、新郷、そして塾をやっている安行という地域の小学校を卒業し、中学校に通う中学生たちにとって、特別なことをしないで、それでいてある程度真面目に学習をしたとして、じゃあどの辺の高校に合格できるのかというと、たぶん川口東(45.5)から鳩ヶ谷(47.7)といった高校になるのではないか?

ただ子供たちの中にも、生まれ持った学習の能力の差もあるから、知能指数の高い子たちは草加南(51.5)や川口(53.0)に合格することになるのだと思う。

浦和西(64.0)や蕨(64.8)やそれ以上の高校に合格し、そこそこの成績をおさめるということは、この地域の中学生たちにとっては奇跡に近いことなのではないだろうか。

 

でも僕の塾に来てくれている生徒の中には、浦和西(64.0)や蕨(64.8)以上の高校を目指そうとする生徒が毎年いる。まあ、彼らに日常的に接している講師たちの元生徒たちがそうした高校の卒業生だったりもするものだから、そういった高校を目指そうとする生徒たちが出てきてしまうのだと思うのだけれど、そうなると僕などはなんとか浦和西・蕨以上の高校に生徒たちを合格させることはできないものか?と必死に考えることになる。

 

そうやって、僕はいろいろと方法を考える。

一人一人その方法は違ったりもするのだけれど、何よりも合格させることが目的じゃなくて、入学後高校の授業についていくことが最優先されなければならないわけだから、決して隙間を狙うような奇抜なことをしたいわけではないのだけれど、時として保護者の皆さんの耳を疑うようなことになってしまうことも多いのだと思う。

 

例えば、高校合格に英検等の資格は必要ないのではないか?という話もそうだし、学習の上の話ではないけれど、私立特待を希望する方たちが多かったときには、その選択は正しいのか?との意見をプログに書かせていただいたこともあった。

最近では、私立高校への単願についての意見も書かせていただいている。

 

ただ僕が思うことというのは何の決定権も強制権も無いわけで、生徒にはときどき話してはいるけれど、僕と違った考えを持つご家庭に対して意見をするようなことはあってはならないと思っている。

私立高校単願のことにしても、もしも保護者の方からご相談があれば意見は言わせていただくかもしれないけれど、やはり決定はご家庭がするべきものだから、私立高校に連絡をしたりもしている。

 

塾に来ていただいているというのに、塾側が意見をいうべきなのか?という考えもあると思う。僕もそれを思う時があります。だからこの辺について迷うところでもあるのですが、意見があるならば、やはり言わせていただくべきではないかと思っています。でもそれをどう考えるのか?というは、ご家庭が判断することだと思います。

 

それでこのことは、これまでにブログやフェイスブックでも何度か書かせていただいていることなのですが、実は僕が生徒に伝え続けていることがあります。

もう10年以上、僕は時折こんなことを生徒に伝えている。

「普段は英語と数学の勉強だけをした方がいい。理科と社会はテスト2週間前に集中する」

このこと、読まれている方はどう思われるのでしょうか?

そんなことはないよ…。そう考える方もたくさんいると思います。

 

このこと、こんな事情があります。

いま公立入試は、明らかに英数高・理社低の状況にあります。

ここが実は問題で、この地域の中3生の多くが受験期が近くにつれて英語数学の成績が下がってくるようです。

原因はたぶんいろいろとあって、まず小学校の時期に身につける発想力と読解力の不足があって、その辺が中学入学後にネックになっていく中で、中学入学後の英語数学の授業のレベルの低さがあるのだと思う。

よく思うのは、定期試験の英語数学の問題のレベルが公立入試のレベルに完全に届いていない。

 

理科社会にも同じことが言えるのだけれど、まだまだそれほど県入試の難易度は上がっていない。英語数学との違いは、公立入試で難易度が上がって平均点が下がったとしても、この地域の受験生たちの得点だけが大きく下がることはないと思う。でも英語数学は難易度がわずかに高くなると、この地域の受験者だけ得点が下がる傾向がある。

 

とすると、英語数学の学習時間を増やすべきなのではないかというのが、僕の思いになっている。

いつから増やせば良いか? 早い方がいいに決まっている。だから僕はあるときから家庭学習も塾での自習も英語数学中心で、理科社会はテスト前にした方がいいと言っている。

ただここで、問題が生じる。理科社会はどうするんだ?ということである。

ぼくはこんなふうに生徒の皆んなに伝えている。

理科社会はテスト前に集中してやろう。テスト1週間前か2週間前に理科社会は集中してやって、それまでは塾の英語数学に集中する。

 

この状況、理解できない方がきっといるのではないか…と、僕も思う。

こんなことを書いている受験情報はきっとないし、公立高校受験は5教科だから英語数学の学力だけが上がっても、理科社会の成績が上がらなかったらどうするんだ?という思いだってあるだろう。それに内申のこともある。

ただ実はここ10年くらい僕の塾では通常は英語数学の学習を中心に、中学の定期試験の前には理科社会を中心にというやり方を伝えている。

だからいま塾で働いてくれている講師たちも、この学習の仕方で成績を上げて高校に合格した人たちだ。それで彼らも自分の中学生時代の経験から、この学習の仕方が合格を生む学習だと思っているようである。

 

これは資格のこともそうなのだけれど、理想としては5教科の学習をまんべんなくするべきなのだと思う。資格だって、取るべきだと思う。

でもそれをしていては、この地域のほとんどの子が中3の受験期に英語数学の成績を大きく下げることになる。

だからといって、中学の授業のレベルを上げることはどうも無理なようだし、例えば塾のテキストを難しくすることも、現状として負担の上で無理になってきている。

だからこその英語数学を中心とした指導なのだけれど、受け手である生徒と保護者の皆さんの理解は得られないかもしれない。

 

※ ( )内は合格者平均偏差値、2020年北辰図書資料から

2020年10月19日月曜日

いまもう一度、公立高校入試を考えてみたくなった

川口東高校で130点、鳩ヶ谷高校で150点、草加南高校で200点、川口高校で220点、草加高校で250点、越谷南高校で270点、浦和南高校で290点。

                                                                                       

選択問題実施校を考えると、市立川口高校が280点、川口北高校が300点、浦和西高校が320点、蕨高校が350点、春日部高校が360点、浦和市立高校が375点、大宮高校が390点、浦和一女が400点、浦和高校が420点。

 

上の得点は、公立入試で合格に必要な高校別の得点です。

意見がある方もいるかもしれないが、シローズでは毎年この得点をもとに受験指導をしている。

もちろんもう一つの指標である内申点も無視できないから、標準的な内申点に対して内申がマイナスであれば合格に必要な得点はさらに上がり、プラスであれば必要な得点は下がるということなのだと思います。

 

それから倍率についても同じことが言えて、1.5倍台まではこの通りでいいと思います。1.6倍を超えたとしたらどうでしょうか? 多少考えるかなあという感じです。1.7倍を超えたとしたら、入試得点を加算しなくてはならないと思います。

 

では資格はどうなのかというと、シローズの場合、あまり考えてはいない。

資格を考えなくても入試で得点が取れた生徒は合格し、取れなかった生徒は不合格になっているという記憶があるからだ。

 

資格のことで言わせていただきたいのは、資格を取るために学習する時間が惜しいと思うことがあります。とくに中学3年生になってからは、それどころじゃないのではないか? そんな想いに駆られることがあります。

もしも資格取得のために要する時間が、通常の塾授業に向かったとしたら、どんな結果が出るのだろうか? 僕の思考はいつもそこに行きついている。

 

実はこの地域の中学3年生たちのほとんどは、2学期以降北辰テスト等の偏差値を下げる傾向がある。

たぶん他の地域の中学3年生たちの、彼らはこの地域よりも高い国語力や思考力を小学校からの学校授業から身につけた子たちが部活終了後に勉強を始めるのが常だから、それに押されるように小学校からの授業で国語力や思考力を身につけてこれなかった子たちの大半が、勉強を始められずに高校受験の時期に突入する。その差が学力の開き、さらには下降を生むのだと思う。

 

それとその時期に数学の学力が下がる傾向があるようだ。

こちらの方は前述のような緩やかな偏差値の下降ではなく、一気にドタンというような下降となる場合がある。11月まで65以上の偏差値を取っていた生徒が、12月の北辰で一気に56まで下がる。そんなことを目にしたことは、僕にはある。

割合的にどうなのだろう…。もしかしたらこの地域の3割から4割の中学3年生たちが、大きく数学の偏差値を下げているのかもしれない。

そういう状況があるから、僕などは資格取得のための動向に疑問を持つ。

 

公立高校入試の残る一つの要素である問題の難易度はどうか?

実は選択問題の導入以降、この地域は入試問題の難易度の影響を強く受けている。

この問題、一言で言えば偏差値通りの得点が入試の本番で取れない…ということを意味する。

 

5人→15人→20人→21人 これは安行中学の過去4年の川口北以上の高校に合格した人数である。

4年前入試問題はかなり難しかった。選択問題だけでなく、学力問題の方も解きにくい問題が多かった。その結果、多くの受験生が公立高校を不合格になっている。4割が不合格だという人もいれば、6割近いのではないか。そんなことを口にした人もいた。

去年と一昨年、合格者が多くなっているのは、中3生たちが努力をしたということよりも問題が非常に解きやすかったことの要因が大きいような気がする。

 

この地域は入試問題の難易度が、即合否に結びついてしまう。

この原因を考えるとき、3つ事が頭に思い浮かぶ。

 

一つは、いまの入試問題が発想力と国語力のあるなしで得点の差が出やすいタイプのものだという点がある。

いま5教科とも国語力の影響を受けやすい問題が多くなっている。

国語の長文のような文章を読むことで、はじめて解ける問題が5科を通じて増えてきている。

そして発想力と言っていいのだろうか。数学では一般的な解き方では解けない問題が増えてきている。

9月と10月の北辰テストの中で、一般的なその単元の解き方では解けない問題が出されていたが、ああいった問題が入試で出題されると、なぜだかこの地域の生徒たちは解けない。それなのに一部の地域の中学生たちは平気で解く。

これは小学校からの授業レベルが大きく関連しているような気持ちになる。

 

県内の一部の中学3年生たちは、小学校入学以来、いやその前から国語力を身につけながら生活してきている。そして学校授業の中で発想力も自然に身についてきているのではないか。でもそれが身に付いていないこの地域の子供たちは、入試前の突貫工事的な受験勉強ではそれが身につかなくなっているのかもしれない。

そういった発想力と国語力の地域間格差が、難易度の高い受験になると見えない学力の違いとして出てきているように思う。

 

二つ目は、受験期の学習量の違いがある。

どうしてもこの地域の子供たちは勉強量が少ない。中には勉強している子もいるが、その子たちとはいえ県内の一部の地域では一般的な学習量なのかもしれない。

この地域のように学習時間が少ないことが一般的な地域では、平均的な学習時間は当然低くなる。そしてそれが一般的な受験勉強だと思ってしまうのだと思う。

ところが県内の一部の地域のように中学校の平均偏差値が60を超えるような地域では、部活終了後に学習をするということが一般的なことになっているのではないか。

この学習量の違いが、難易度の高い受験に対応できない地域と、対応できる地域を生んでいるように思う。

 

三つ目は、いま中学生たちと保護者の興味は中学の定期テストに向かっているように思う。それはこの地域だけの問題ではないと思う。

そしてそのニーズを受けて、ほとんどの学習塾はその対策に追われているのではないか。ただ、ここで問題が生じる。この地域の中学の定期テストは問題のレベルが低すぎるのだ。

 

だから塾は定期テスト対策として、授業のレベルを下げがちになる。そして生徒たちはそれに慣れ、保護者は点数や学年順位に一喜一憂しながらも、定期テストの先に高校入試があると考えてしまっている。

でも実際には、定期テストの問題と入試問題はレベルが違いすぎている。

こうした悪循環の中でこの地域の中学生たちは日々中学校生活を送り、高校受験に一歩ずつ近づいていく。

 

この地域のごく平均的な中学生たちの進学先である川口東高校で130点、鳩ヶ谷高校で150点という合格点は、定期テストを念頭に置いた学習をした結果となっているのではないか?

 

この地域の中学3年生は定期テストを念頭に置いた学習状態の中で、準備不足のうちに高校入試の時期を迎えているのかもしれない。そして大半の子供たちにとって、入試は初めて向き合う本格的な総合問題なのかもしれない。

北辰テストの経験はあっても、時間区切った形での公立高校の問題を初めて向き合った子供たちも大勢いるのかもしれない。

もしもそうだとしたら、入試問題に目が慣れないうちに入試を経験することになっているのかもしれない。

だとしたら、一般的な難易度の入試問題でも対応できないのに、難易度の上がった入試問題には一層対応できないのではないか?

 

 

前述の合格に必要な得点をもう一度見ていただきたいと思う。

安行・新郷地区の中学生たちのちょうど真ん中の生徒が入る高校が川口東高校、鳩ヶ谷・戸塚地区の中学生たちの真ん中の生徒が入る高校が鳩ヶ谷高校なのだと思う。

入試は1教科100点満点だから、川口東高校は1教科26点で、鳩ヶ谷高校の方は1教科30点で合格することになる。

 

100点満点で26点や30点という数字が意味するものを考えるとき、僕はいまのこの地域の高校入試の難しさを感じてしまう。

自然とこの地域の中学生たちの流れが川口東高校や鳩ヶ谷高校に向いているような思いさえしてくる状況がある。

 

そんな中では川口高校は進学校になっているのかもしれないし、市立川口は秀才の入る高校になっているのかもしれない。

ただこんなことを僕は経験している。

 

川口高校よりも少し高い高校の定期テストの問題を見た事がある。

基本問題と言っていいのだろうか。いや基本問題と言うよりも、明らかに点数を取らせようとする学校側の意思が感じ取れた。

しかしその高校に通う生徒たちは、その高校を歴史あるレベルの高い高校だと言っている。この辺の矛盾が、いまこの地域の中学生たちの多数が入学する高校にはある。

学校側が事実を伝えずに、励ますことに専念しているんだ。

 

でも考えてみると、いまを生きる子供たちは、励まされることに専念されているコミュニティーの中で生きているのかもしれない。

保護者は褒めることに専念し、我が子が迷わないことをいつも念頭に置いた子育てを目指す。

本来高校受験は、現実の世の中を見せる手段でもあるばずなのに、寄ってたかって、現実を見せない方向にこの地域は進んでいるような気がする。

 

202010月半ばすぎ、シローズに来てくれている中3生たちはかなり焦りを見せているようだ。

3ヶ月に及んだ休校の影響が確かにある。勉強をしようと言う気持ちが、この地域にいま渦巻いている、受験期になっても机に向かおうとしない妙な雰囲気に足を取られている。

 

先週木曜日に届いた北辰テストの結果はひどかった。

生徒たちの個別の偏差値だけを見て、事務所のテーブルに置いたままにしていた北辰から送られてきた冊子の内容を見ていたのは、塾の授業を持つはずもない家内だった。

 

「まずいんじゃない」

目が覚め切っていない僕に、彼女はそう言った。

見たことのない平均偏差値、頼みの綱の数学の偏差値でさえ、例年のこの時期よりも7ポイントくらい下回っている。

「これじゃ土日閉められないよ」

黙っている僕に、家内はそう言った。

この成績の先に何が待っているのか? 僕には分からない。わずかな希望を大きな悲観が包み込んでいる。

 

授業の形態を変えるべきなのか?

でもそんなことで変化が出ないことは、20年以上も塾をやっていれば、僕にも想像ができる…。

ただいまの僕に出来きることと言えば、土日もできるだけ閉めずに窓を開け、換気扇をつけて、エアコンを適温にして、生徒たちを待つことだけだ。

2020年8月22日土曜日

市立川口高校の「学校選択問題」導入を思う

市立川口高校が来年度の受験から学校選択問題(以下選択問題)を導入するという。

倍率が下がるのではないか? 僕がまず思ったのがそれだった。

 

なぜ、市立川口高校は選択問題の導入を決めたのだろうか?

それを書かせていただく前に、市立川口高校が今年の入試まで使用していた学力検査問題(以下学力問題)と来春の受験から導入される選択問題の違いについて、書かせていただきたいと思う。

 

学力問題も選択問題も国語・理科・社会の3教科は共通のものが使われている。

だったらそれほど大きな違いはないのではないか?と思われる方もいるかもしれない。でもこの二つの入試問題は大きく違う。

 

学力問題の得点を上げるのには、選択問題に比べて長い時間を必要としない。

市立川口が選択問題を採用したいま、県南の高校で一番の高得点を必要としているのは浦和南高校だと思われるが、そこであっても合格に必要な得点は一般的な内申点であれば280290点ほどになるのではないかと思われる。

もしも280 点だとすれば1教科56点、入試問題は100点満点であるから、56点といえば半分ちょっとの点数になる。ということは、浦和南高校は学力問題の入試得点で半分ちょっと以上の得点が取れれば合格点となる。

市立川口高校は、ほぼこの浦和南高校と同程度のレベルであると思われるから、いま市立川口に通っている生徒たちは入試で各教科半分ちょっと、合計で300点弱の得点以上を取った生徒が通っているはずである。

 

ここである状況が思い浮かんでくる。

毎年1月の末、私立入試が終わると、シローズでは公立入試過去問題の演習を行っているが、僕は市立川口や浦和南、そして越谷南を受験する生徒にこんな言葉をしきりに伝えている。

「全問を解こうとしない方がいい。6割の得点が取れればいいのだから、4割は捨てていいんだよ」

僕は、その時期に毎年同じような言葉を生徒たちに伝えている。もう10年くらい言い続けているかもしれない。

 

そうすると、生徒たちは解き方を変えだす。

これまでは全問題を解こうとしていた生徒たちは、解けそうな問題を探し始める。そして解けない問題を残しながらも、安定した点数を取り始める。

半分ちょっとの得点を取ろうとするとき、学力問題はある程度以上の学力を持つ生徒にとっては、比較的短期間で得点を積み重ねることができる入試問題なのだと思う。

 

でも選択問題は、こうはいかない。

とくにこの地域の中学生の場合は、尚のこと。時間と労力をかなり要することになる。

毎年県入試まであと半月となった頃、僕は比較的学力問題の高校を受験する生徒たちを落ち着いて見ているような気がする。でも選択問題の高校はそうはいかない。直前までバタバタしながら、僕も不安になりながら、生徒たちを見守ることになる。

 

選択問題の何が学力問題と違うのかと言えば、英語は中学では習わなかった英単語や言い回しが出される。そして長文を解くにはかなり経験が必要となる。

数学は、最近はほとんど中学校の例題的な問題が姿を消した。数問出される計算問題も、中学の教科書やワークの類に載っている問題とは違う。

つまり英語でも数学でも、この地域の中学生であれば、やはり特別な勉強が必要となってくる入試問題なのだと思う。

 

英語では語彙力が関わってくるし、長文を読み取る力がどうしても必要となってくる。ということは英語力だけではない国語力の有無が得点を左右することになる。

数学では問題を作っている要因が学力問題に比べて、かなり増えるような気がする。いくつもの事項を頭の中で、持っている知識を使いながら、同時進行でいくつもの事項を考え、それを使って答えを出す力が必要となっている。

 

そしてこの地域の中学生たちは、保護者もそうだと思うが、選択問題を敬遠する向きがある。

まだ8月だから、それほどでもないかもしれないけれど、これから年末に近づくにつれて、選択問題を実施している高校への受験を心配する気持ちが増してくるようだ。

というのもこの地域では、中3生たちが二学期以降、数学や英語の偏差値を大きく下げる生徒が続出することになる。とくに数学の落ち込みは大きい。

9月から12月まで、偏差値を下げる生徒は半数近いのではないか?などという信じられない話は毎年のように伝わってくる。

そんな中で、どれだけの生徒が選択問題の高校を受けるのか? 多くの中学生たちが不安を募らせていく中で、同レベルであれば、選択問題を採用する高校よりも学力問題を採用する高校を選ぶご家庭は多いはずである。

 

ここで疑問が生じる。

2020年度の入試で、市立川口高校は倍率を大きく下げている。2018年度、2019年度と普通科で1.5倍台、理数科で2倍を超える高倍率だったのが、普通科で1.2倍、理数科で1.4倍まで下がってきている。唯一文理スポーツ科が2019年度に1.5倍だったのが2.1倍まで上がった。

2019年度に理数科は川口北と完全に並んでいる。2020年度の資料はまだ手元に来ていない状況だが、理数科と言えども、もう川口北のレベルではないだろう。

そんなときの選択問題の導入は、やはり腑に落ちない部分がある。

倍率がこれ以上下がってしまったとしたら、下がらないまでも1.7倍以上の高倍率が続かなければ、高校の難易度の上昇はない。

もしかしたら教員間の決定ではなく、学校の外から強い圧力があったのかもしれない…などと想像を支度もなる。

 

もしも選択問題の導入によるメリットがあるとすれば、それは大学受験に有利な生徒は見つけやすくなることなのかもしれない。

学力問題の問題では、どうしても入学後の成績やとくに大学入試の学力を測れない部分がある。例えば学力問題の数学で80点以上の得点を取った生徒が理系の大学に向いているかなどは分からないという事情がある。

それほど学力がない生徒であっても、点数の取り方で高得点が取れるのが学力問題との見方ができる。

それが選択問題となることで、より受験生たちの本当の学力が見えやすいものになるのかもしれない。

生徒たちの学力をきめ細かく見ることができれば、より大学入試の指導に役立つものになるから、そのための選択問題導入なのかもしれない。

 

ただやはり、頭の中でどうしてもクエッスションマークが点滅してしまうのはなぜだろう?

市立川口高校は、大学進学を強くアピールしている高校である。

入学試験前の説明会でも、在校生に対して中堅ではない上位大学への進学を強くアピールしている高校である。

市内ではもう一つの進学校である川口北があるが、アピール度では川口北を完全に上回っているのではないか。

その結果が、来春に出る。新市立川口高校になってから入学した生徒が初めて来春卒業生を送り出すことになる。

どれくらいの合格実績になるのだろうか?

 

これは私の持論であるが、大学受験を目指すには高校入試時に偏差値65が必要なような気がしている。5教科でも3教科でもなく、英語と数学がともに65を超えていることが必要条件であるような気がする。

私は高校受験のことしか知らないから、大学受験については常識の範疇以上の情報を持っているわけではないが、塾に来ていた元生徒たちで中堅以上の大学に合格した元生徒たちは、ほぼ全員が高校入試時に英語と数学で65の偏差値を持っていた。どこの高校に進学したかではなくて、その生徒が持っている勤勉性や逞しさのような気持ちの方が、大学受験のの結果に大きく関わっていたような気がする。だから進学した高校と大学受験の結果は、僕が接してきた元生徒たちの状況では、それほどの関連性はないのしれない。

 

現在の市立川口高校は、圧倒的に英語と数学の偏差値が65以下の生徒で占められている。

もしも進学校としての評価を得ようとするのなら、入試問題の変更などよりも偏差値65以上の生徒をどうやって集めるのか? そのことの方が重要なような気がするが、これを読んでいる皆さんはどのように思われるのだろうか?

やはり僕の中では、今回の市立川口高校の選択問題の導入は、理解できないもどかしさがある。